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会報誌「aile」vol.67

会報aile67号(2009年5月号)

すべては心の姿勢から~自ら選び、引き受ける



武田 陽子さん
株式会社武田商店おそうじまま代表

愛知県生まれ。大学卒業後、大手電線メーカーに入社。退社後、日本マクドナルド(株)に入社。女性初の店舗開発営業として活躍するが、1年半後、出産のため日本マクドナルドを退社。しばらく主婦業に専念した後、不動産事業を開始。1995年、清掃請負業「おそうじまま」を設立。
2001年、第1回創業ベンチャー国民フォーラムにて起業家部門地域振興賞を受賞。現在、社団法人全国ハウスクリーニング協会教務委員・技能審査委員も務める。

事業概要


株式会社武田商店おそうじまま
〒460-0012 名古屋市中区千代田2-10-5
Tel:052-241-1940
Fax:052-241-1956
URL:http://osoujimama.com/
■事業理念
わたしたちは快適な環境づくりの一端を担う者として、環境にも人にもやさしく、誇りを持って掃除業に取り組みます。
■事業内容
一般家庭・マンション・オフィス等の清掃
すべては心の姿勢から~自ら選び、引き受ける

武田さんが部屋の中に入ってくるだけで、その場の空気がぱっと明るく華やかになる。いつお会いしてもテンポの良い語り口は小気味よく、話しているうちにこちらまで元気になってしまう。

武田さんが経営する“おそうじまま”は、設立から間もなく15年を迎えようとしている。“おそうじまま”はその名の通り、一般家庭、マンション・オフィスなどの清掃を請け負っている。100名のスタッフは、ほとんどが子どもを持った主婦を中心とした女性達だ。

「子育て中のスタッフは、子どもの急な病気など、どうしても休まなければならないこともあります。だから常にシフトには余裕を持って、休みたいときには休んでもらえるようなシステムをつくってきました。休んだ人の分は、他の仲間がフォローする。逆に他の人が休んだときは自分がフォローに回るような、みんなでサポートしあえるしくみなんです」。

そんな武田さんのもとには、多くの信頼できるスタッフが集まり、いつまでも働き続けたいと口々に言うそうだ。

仕事の面白さと出会う

武田さんが大学を卒業したのは、オイルショックの後。大卒女性の求人など全くなく、やっとの思いで大手非鉄金属の会社へ入社する。はじめて仕事に触れた武田さんは、その面白さに目覚めたという。

「ただ、総合職という言葉すらない時代で、仕事の内容は、男性社員のアシスタント業務に限られていました。そこには物足りなさを感じていました。“背広を着てくれば、男性と同じ仕事をさせてもらえるんですか!?”と上司にかけあったことも(笑)」。

その後、結婚を期に退職し、東京へ。東京では、知人の紹介で日本マクドナルドの店舗開発の営業職として採用される。

「マクドナルドが日本に上陸して7年目で、快進撃を続けていた頃です。初めての女性営業でした」。

男性と全く同じ条件での仕事は、やりがいがあった。カリスマ経営者である藤田田氏と毎週同じテーブルを囲みながら会議をし、外に出れば飛び込みの営業もこなした。

「結果だけが意味を成す世界でした。営業の仕方もマーケティングもそこで学ぶことができ、本当に感謝しています」。

ただ一方で、女性がキャリアを積んでいくためには自らが女性であることを否定しなければならないのだろうか、という想いもあった。

「当時お一人だけ女性の管理職がいらっしゃったんです。非常に優秀な方でしたが、男性の2倍、3倍働いていらっしゃいました。その大変な姿をみながら、女性であることも一つの個性のはず。それを活かしながら働く方法はないのだろうかと考えたものでした」。

子育て中だからこそ選んだ「起業」

妊娠をきっかけに日本マクドナルドを退職し、名古屋に戻った。3人の子どもに恵まれ、育児に専念する日々が続いた。

「子育ての期間は、本当に楽しくて、得るものの多い貴重な時間でした」。

が、仕事をしたいと思う気持ちが武田さんの中から消えたわけではなかった。ある日、母親との何気ない会話の中で「もう一度仕事をする」と思わず口にしている自分がいた。

「あぁ、やっぱり仕事がしたかったんだ、と自分でも驚きましたが、その一言が再び動き始めるきっかけとなりました」。

宅地建物取引主任者の資格を持っていたこともあり、一番下のお子さんが保育園に入園した年から不動産業を開始。

「育児をしながら仕事をはじめようと考えたとき、パートタイムの仕事を選ぶ考えは全くありませんでした。自分で自分の時間をコントロール出来る仕事をと考えたのです」

武田さんの周りには、父親をはじめ、企業経営者が多かった。

「だから起業が特別なこととは考えていませんでした」。が、一方で経営の厳しさ、怖さも間近で見てきた。「女性であっても仕事を続けたい、自立をしたいと強く思っていたのは、そんな経験も影響しているかもしれませんね」。

徹底的に利用者の目線で

不動産業を営む中で、入退去時の清掃等の必要性を感じた。そして、主婦でもある武田さんにとって、清掃代行業は“自分にとって必要なサービス”だった。

「じゃあ、自分でやってみようかと。実は、わたし、掃除はあまり得意じゃないんです(笑)。でも、だからこそ、お客様がどんなことを必要としているかはわかるのではないかと思ったんです」。

経営の経験はあったが、業界の知識は皆無に近い。だが、武田さんはそれこそを強みだと考えた。常に利用者の目線に立つことを自分に課した。

最初の一ヶ月間は、契約書類、マニュアルの整備、広告の作成に集中した。

「常に安定したサービスを提供するにはマニュアルの作成が必須だと考えました。自分が利用者だったらどんなところにこだわるか、どうしてもらったら嬉しいかということをひとつひとつの作業に落とし込んでいったのです」。

清掃する場所によって雑巾を変えること、鏡を拭いた後のチェックの仕方など、その項目は膨大だ。

「現在もそのマニュアルは常にグレードアップしています」。

また、武田さんがこだわったのは、スタッフとして働く人材に喜びと誇りをもってもらいたいということ。

「清掃業は大変な仕事。だからこそ、元気の出る明るいイメージが必要だと考えたのです」。

その考え方は、イメージキャラクターやユニフォームに反映された。また、外部の講習の受講や資格取得など含めて、スタッフのレベルアップの機会も充実させている。

「サービス業は人材が全て。お客様が何を望んでいるかをすばやく見抜き、そのポイントを組み立てていく能力を身につけてほしいと願っています」。

そんなおそうじままだからこそ、新規のお客様のほとんどが紹介であり、一度縁のあったお客様とは長くお付き合いが続いていくのだという。

「本当に申し訳ないことに、お受けできない場合もあります。せっかくご希望される方にきちんと対応できる体制が、今後の課題でもあります」。

大学院で過ごしたかけがえのない時間

清掃業界で規模を大きくしようと考えた場合、フランチャイズ展開が一般的だ。ただ、武田さんは、自分の目の届く範囲で責任を持って質の高いサービスを提供する道を選んだ。そんな中で、次の一歩をもう一度じっくりと考えたい…。そう考え、2年前、中京大学大学院の門を叩いた。

実は、大学院で学びたいという気持ちはもう少し前からあったのだが、社長業に加えて、義父母の入院のため、病院に通う日々が続いた。時間的にも精神的にも余裕がなく、4年ほど入学を見送ったという。武田さんが在籍していたビジネスイノベーション学科は社会人専門のコースとして始まり、企業で管理職として各界で活躍するビジネスパーソンたちが多く学ぶ。

「大学院では、“なにを学ぶか”から手探りでしたが、担当のゼミの教授が実務経験の長い方で、自分の仕事に役立つよう、自分の仕事の問題点を掘り下げるよう勧めてくださったのです」。

様々な角度から、数字を洗い直し、おそうじままの中期計画を立てる、というのが研究のテーマだった。2009年3月に晴れてMBAを取得。卒業。

社長業と学生の両立とは、非常にハードな日々だったに違いない。が、武田さんは「純粋に楽しい日々でした。“学生”という立場に身をおけるだけで、本当にありがたいことだった」と振り返る。

大学院には真剣に学ぼうとする、そしてその学びをリアルな現実社会の中で活かそうとする年齢や立場を超えた仲間たちがいた。その仲間たちと過ごした時間は、かけがえのない体験になったそうだ。

すべてを成長の糧に

武田さんの話を伺っていると、過去の苦労や悔しさや辛さ、そういったものがすべて“学びや気づきの経験”として語られる。そして常に前向きで振り返らない。その姿はとても潔い。

「大学院の授業で心に残っているフレーズで、“ある出来事が起こったとき、それに対してどのような心の姿勢で向き合うかは常に自分自身が選択している”というのがあったんです。本当にその通りだと思います」。

あらゆる出来事からまっすぐに物事の本質を学び、次に生かし成長の糧にしていく力。それこそが武田さんのオーラとパワーの源ではないだろうか。

武田さんはこれからもますます輝きを増していくに違いない。そう、それはまるで、どんな光をも、柔らかく美しい輝きへと変えていくダイヤモンドのように。

取材・文/久野美奈子 写真/松原雅人(ケア・プラン)

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