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会報誌「aile」vol.61

会報aile61号(2008年5月号)

働く理由~99の名言に学ぶシゴト論



戸田 智弘さん
ライター&キャリアカウンセラー

1960年愛知県生まれ。北海道大学工学部、法政大学社会学部卒業。
20代後半からの5年間、日本でいち早くコミュニティビジネスに取り組んだ(株)プレスオールターナティブで働く。この組織で「フェア・トレード」(第三世界ショップ)や市民バンク、非木材(ケナフ)紙の開発などの仕事に従事する。その後、出版業界に転職、単行本の編集と営業に携わる。
38歳以降は編集プロダクションに所属しながら、本の執筆活動を進める。「伊豆高原絵本の家」(静岡県)とマイジョブクリエイションズ(富山県)という二つのNPO法人の副理事を務めている。

書籍情報


戸田智弘さん著作リスト
『老後をアジア・リゾートで暮らす』(双葉社)
『50歳からの脱ニッポン読本』(双葉社)
『妻が夫に書かせる遺言状』(主婦の友社)
『50歳からの海外ボランティア』(双葉社)
『海外リタイア生活術』(平凡社新書)
『狙われる日本人』(NHK生活人新書)
『職在亜細亜 職はアジアにあり!』(実業之日本社)
『元気なNPOの育て方』(NHK生活人新書)
『障害者自立支援法下における地域生活支援事業所ガイドブック』(共著、特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク)
『働く理由 -99の名言に学ぶシゴト論』(ディスカヴァー21)
『働く理由~99の名言に学ぶシゴト論。』

『働く理由』――。2007年7月に発行されたそのシンプルなタイトルの本が、発売後半年以上経った今も、書店の入り口近くに平積みされている。

人は何故働くのか。働くとは一体どういうことなのか。その問いに正面から取り組んでいる人もいれば、時々ふっと思い出しては考える人もいるだろう。が、おそらく誰にとっても避けて通ることはできない問題だ。

『働く理由』は、サブタイトルに“99の名言に学ぶシゴト論。”とあるように、ページをめくるごとに古今東西99人の著名人の言葉を道しるべに、働くことの意味を考える旅に連れ出してくれる。そこにはわかりやすい“解答”はないが、99の仕事論を自分がどのように受け止めるかを考えているうちに、自分だけの答えがぼんやりと見えてくる・・・。そんな本だ。

「書くことは考えること。分からないから考えて書く。幸い世の中にはわからないことがたくさんある。だから書くことに飽きることはないだろうと思います」。

こう語るのは、『働く理由』の著者、戸田智弘さん。現在、ライターとして活躍しながら、キャリアカウンセラーとしても活動を行っている。「働く理由」は、戸田さん自身にとっても大きなテーマだった。

20年前に出会った“ちょっと変わった働き方”

「僕の人生は“こんなはずじゃなかった”の連続なんです」と戸田さんは笑う。

大学では工学部応用化学科に在籍。第一志望のプラント業界への就職は叶わず、“やむを得ず”非鉄金属メーカーに就職。しかし、仕事に面白さを感じない日々が続く。

「一日に何回も時計を見ていました。一日が本当に長かった」と振り返る。

結局3年勤めて退職。その後、大学の社会学部に編入する。
2回目の大学卒業後は、株式会社プレス・オールタナティブに入社。プレス・オールタナティブは、1985年に片岡勝氏が設立した、多様な価値観を軸に様々な問題解決型事業を運営する組織。日本における社会起業家やコミュニティビジネスの先駆け的存在だ。戸田さんは「第三世界ショップ」というフェアトレード部門や、非木材紙の企画・開発を手がける環境クラブ部門で働いていた。

プレス・オールタナティブに入社したのは、これまでの世の中にない新しさを感じたから、という戸田さん。「社会性と経済性と個性という三つを仕事の中で実現していく。そういう“市民事業”の考え方がとても新鮮でした」。

“入社した”とはいっても、会社に雇用されたという意識はほとんどなかった。あくまでも新しい社会的な意義あるプロジェクトに参画している、という感じだったという。

「当時は組織を少しずつ作っていく段階だったし、月給も10万ちょっと、という世界。それでも、誰もやったことのない新しいことをやっているんだというわくわく感があって、毎日がものすごく楽しかった」。

「ここでなら一生やっていくことができるかもしれない」と思ったという戸田さんだったが、5年ほど経ったとき、次の転機を迎える。

「組織として少しずつ安定してきた頃でした。安定すると面白くなくなってくる。それで新しいことがやりたくなる(笑)。同時に自分がこれからどう働いていくかを考えたときに、専門領域と呼べるものをみつけたいと考えたのです」。

新しいアイデアを形にしていくことにはずば抜けた才能を持つ人、片岡さんがすぐそばにいた。
では、自分の強みとは一体なんだろう・・・。

それまでの人生を振り返ってみたとき、本を読むこと、文章を書くこと、調べものをするときは時間があっという間に過ぎた。ライターか編集者か・・・。
心に浮かんだキーワードを確かめるために、仕事でつきあいのあった出版社に転職。編集作業や書店営業の仕事をしながら、「本を売るというのはこんなにも大変なことなのか」と実感する。動いてみたことで、「憧れ」や「イメージ」でしかなかった「ものを書く」という行為が、次第に実態を伴った「仕事」として感じられるようなっていった。

“豊かな社会”で働く意味を求めて

ライターとしての戸田さんがはじめに意識したテーマは、「海外」だった。
1970年代半ば以降、日本では「物の豊かさ」よりも「心の豊かさ」を生活の中で大切にしたいという意識が高まっていく(内閣府・国民生活に関する世論調査より)。プレス・オールタナティブ時代に海外と関わる仕事をしていたこともあり、日本の“豊かさ”について海外という視点から考えてみようと思い立ち、海外で暮らす日本人を取り上げた著作を次々に発表する。登場する日本人は団塊の世代と呼ばれる人々でもあり、物質的な豊かさを求め続けてきた人々のこれからを考えてみたいという想いもあった。

「僕は一つのテーマについて掘り下げたいタイプなのです。それにあまり器用じゃない。だから、雑誌のライターには向いてなかった」。

必然的に戸田さんのフィールドはノンフィクションの書籍になっていった。

その後次第にテーマは「働くこと」へとシフトしていったが、「働く理由~99の名言に学ぶシゴト論。」を上梓してからというもの、戸田さんのもとには仕事についての相談が寄せられるようになった。遠方の方がメールで深刻な相談をしてくることもある。

「何らかの支援を仕事にしている人ってみんなそうだと思うんだけど」と前置きしつつ、「キャリアカウンセラーだからといって、相手の人生を背負えるわけではなく、そこまで求められているわけでもない。でも、こういう本を書いた以上、もう一歩踏み込むことが大人の責任じゃないかと思うのです。私の本を読んでくれて何かを感じ、『自分の仕事について誰かに相談に乗って欲しい』と思っている人を何らかの形でサポートできる場をつくれないかと思ってます」。

ライターと並行して、具体的な事業の立上げも行っていきたいというのが戸田さんのビジョンだ。昨年は、愛知県内のNPO法人と連携して、大学生のキャリア教育にも携わった。

「少人数のクラスだったんですが、働く現場を体験したり、その体験を言語化して仲間と共有することで彼らの意識がどんどん変化していくことがわかる。面白かったですね」。

「能力も高い、やる気もある。でも、企業の中では働けない。こういう人ってたくさんいますよね。」と戸田さん。

働く意味ややりがいを考えたときに、一般企業の中では力を発揮できない人がいる。それはかつての戸田さんの姿とも重なる。

人生は自分だけの物語

本で伝えられるのは一般的な“法則”にすぎない。読者はその法則を参考にしながら、世界にたった一人しかいない自分の“物語”を紡いでいく。そこには何の優劣もなく、たった一つの物語であることそのものが尊いのだと戸田さんは考える。
今年の夏頃には『働く理由』の続編が書店に並ぶという。

「このテーマを突き詰めていくと、“自己とは何か?”“存在とは何か”“幸せとは何か?”“人生とは何か?”という壮大なテーマを考えざるをえない(笑)。こうなると、ほとんど禅や哲学の世界で、考えるネタが尽きることはなさそう」と笑う戸田さん。

働くことの本質を見つめながら考え続け、書き続けていくことは、戸田さんにとって苦労も含めて「やりたいこと」に違いない。99の名言とともに、戸田さんの存在とその歩んできた軌跡そのものが、働くことについて考えている多くの人々の道しるべなのかもしれない。

取材・文/久野美奈子 写真/河内裕子(写真工房ゆう)

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